| ウチだけの王子様、私だけのお姫様 「このちゃんとデート」から1週間後のお話 今日も楽しい にちようび〜♪ 次の休みの日、このかと刹那はまたまたデートに。 今度は池やサイクリングコースがあるような大きな公園。 一緒に公園の名所大きな花壇を観て回ったり、アスレチックに登って遊んだり、池の魚やハトに餌をやったりして楽しく過ごした。 今日は尾行者たちはいない…はずだ。 なぜならネギやアスナたちが要注意人物たちを監視してくれているはずからだ。 「そろそろおなかがすいてきましたね。なにか食べましょうか。」 刹那の提案にこのかはニッコリ笑ってこう答えた。 「せやせや、あはっ。実はな今日朝早く起きてウチがせっちゃんのお弁当作ってあげてん。食べてな。」 「あっ、そうでしたか…。それではいただきましょう。」 刹那はテレながらもうれしそうだ。 二人は手ごろなベンチに腰掛けた。 公園の池や大きな花壇が見渡せる絶景のポイントだ。 天気は良好。 暑すぎず寒すぎず、爽やかなふんわりと風が顔をなでる。 「はいせっちゃん、あーん♪」 「あーん…ぱくっ。…ハッ!」 しまった…またまたやってしまった…。 「はうううう…このちゃん…。」 「あっ、せっちゃん口元が汚れてるえ。ウチがふいたる。」 このかがハンカチで刹那の口元を綺麗にふき取る。 「あうううう…からかわないでくださいよ。は、恥ずかしいです〜。」 「あはははは!照れてるせっちゃんってほんまかわええな♪」 昼食を済ませた二人。 そのとき不意にいたずらな小さな虫が刹那の耳の中へ。 「ひゃううう!耳に虫が…。」 「そんならウチがとったるえ。膝に寝転がってえな。」 耳かきを取り出しながらこのかが言う。刹那はまたまた完熟トマト状態になりながら。 「い、いいですよ。自分でできますから。」 「ええからええから。」 少々強引に刹那を寝転がす。またまた膝枕。 その上、このかの耳掃除が始まった。 「よいしょっと、ああとれたえ。ああ待ってや。他の汚れも取ったるから。せっちゃん気持ちええかえ?」 「は、はいとても…。あ、ありがとうございます〜。」 「ひゃはは!そらよかったえ。」 相変わらずのバカップルぶりのこのかと刹那であった。 とても幸せな2人。しかし2人はこの後、かなりとんでもない災難に見舞われることを知る由もなかった。 2人は公園の大きな池で手漕ぎボートを借りて乗った。 始めはこのかがやりたいと言ったので彼女がボートを漕いでいたが、疲れてしまったので今は刹那が漕いでいる。 2人とも微笑みあって、他愛のない世間話をしていた。 「…そんでな、そのときアスナが…。」 「へえ〜そうだったんですか。」 「いや〜あんときはすごかったえ〜。あや?あれ、まきちゃんたちやないかえ?」 見ると、運動部仲良し4人組が岸の方で歩きながら雑談している。 彼女たちは別にこのかたちを冷やかすために尾行してきたわけではない。 たまたま通りかかっただけである。 このかは4人組に声をかけようと大声で呼び、手を振った。 「おーい!まーきちゃーん!」 少し距離があったため、聞こえていないらしい。 「しゃあないな…。」 このかは4人組に気づいてもらえるように姿勢を高くした。 「あや、あっこにおるんこのかと桜咲さんやないか?」 ようやく亜子が気づいた。 「ほんとだー。おーい!」 まき絵が笑顔で手を振り返す。 ところが。 ザザッ! 不意に少し高めの波が襲ってきた。 「えっ!あわわわわわ!!」 「わっ!このちゃん、ああー!!」 このかが片側に寄っていたために、ボートがバランスを崩して転覆してしまった。 ザッバーン!!!! 「ぷっはー!大丈夫ですかこのちゃん。…あれ?このちゃん?」 このかが見当たらない。 「このちゃん!?このちゃん!?まさか…くっそー!!」 刹那は深呼吸して池に潜った。 一方岸の方では、 「なっ、ボートが転覆しよった!」 「ちょっ、このかが浮いてこないよ?」 「ええー!確かこの池って結構深かったよね?」 亜子と裕奈とまき絵が青い顔で言った。 「くそっ!」 バッシャーン!! 水泳部であるアキラは荷物を投げ捨てると、躊躇せず池に飛び込んだ。 足を痛めて身動きがとれなくなってしまったこのかは、池の底の方へ沈んでしまっていた。 「(せっちゃん…せっちゃん…助けて…助けて…)」 遠のいていく意識の中でこのかは必死に刹那のことを考えていた。 「(絶対大丈夫や…絶対せっちゃんが…)」 意識が途絶えそうになったとき不意に唇に何かが触れた。 刹那の唇だった。 彼女はこのかにわずかながらの酸素をもたらした。 その目は確固たる想いを宿していた。 「(このちゃんは絶対、私が守る!!)」 アキラの手伝いもあり、このかはスムーズに岸へ上げられた。 ところが… 「だめだ、意識が戻らない。」 刹那は焦った。そして言いようのない恐怖に襲われた。 大好きな人が、この世で最も大切な人の命が燃え尽きようとしている。 それだけでもうパニックになってしまった。 まき絵たちもどうしたらいいのかオロオロとするばかりだ。 しかし、比較的冷静だったアキラが素早く行動を起こした。 「息が詰まっている。呼吸が出来ていない。くそっ、脈も感じられない。」 アキラは大声で他の者に指示した。 「亜子は救急車を呼べ!まき絵と裕奈は誰かその辺の人に助けを求めるんだ!早く!」 「「「は、はいっ!!」」」 アキラの的確な指示で、3人は速やかに行動に移った。 「桜咲、これから救急車が来るまで心肺蘇生を施す。やり方は知っているだろう?お前が彼女を救うんだ!!」 ここでようやく我に返った刹那。 「は、はいっ!」 刹那は落ち着きを取り戻すと、行動に移った。 まず、顎を上げて気道を確保。 まだ呼吸は戻らない。 「くそ…こうなれば人工呼吸しかない。」 アキラの言葉に刹那は一瞬躊躇したが、すぐさま行動に移った。 気道を確保したまま、このかの鼻をつまんで、息を大きく吸い込み、息を吹き込む。 それを2回繰り返して…。 脈が正常に戻らないのを確認すると、アキラが心臓マッサージを行う。 1、2、3、4 再び刹那が人工呼吸を… 刹那はこのかに口づけすることに抵抗があった。 が、しかし、この世で最も大事な人の命を救うためだ。 池の中でもしたのだが、あの時は考える暇もなく、気づいたときには体が自然にそうしていた。 そして今。 これはキスとは違う。 人工呼吸なんだ。 そう自分に言い聞かせてただひたすらこのかのために無我夢中でがんばった。 「(お願い…お願いだから…このちゃん…生き返って。)」 昔、刹那は川で溺れたこのかを救えず、悔しい思いをしたことがあった。 そのときのこのかと今のこのかが重なる。 「せっちゃん、助けてせっちゃーん!!」 あのとき私は何も出来なかった。 しかし、今は違う! 今の私にはお嬢様を救う力があるんだ! 「う…ぷはー!」 このかが水を吐き出した。 「はぁはぁはぁ…」 同時に呼吸もほぼ正常に戻る。 ゆっくりと目を開いたこのか。 目の前には心配そうな刹那の顔が。 「ああ…せっちゃん…今度も…やっぱり助けてくれてんな…ありがとな…ほんまに…。」 「このちゃん…よかった…本当に…うっ、うっ、うっ…」 大粒の涙を流しながら、刹那はこのかを強く抱きしめていた。 「ほんとびっくりしちゃったわよ。このかが一時危篤になっていたなんて。」 「ええ、本当によかったですね。」 病院にこのかの見舞いに来たアスナとネギが安堵の表情で言った。 「心配かけてスマンな。」 「いいわよ。ねえ、聞いたわよ刹那さん。このかを必死になって救ったってね。」 「せやねん。応急処置がなかったらもうちょっとでやばかったってお医者さんに言われてもうたえ。脳にも障害が残ったりせんかったし。ほんまにほんま、ありがとなせっちゃん。」 「い、いえ。私は当然のことをしたまでで…。それに大河内さんの助けがなかったら、私は…。」 あくまで謙遜な態度を崩さない刹那。 その様子にこのかはまたまたいたずらな笑みをこぼすと、 「そういえばせっちゃん。お礼がまだやったな。なにがええ?」 と何か意味ありげに訊いてきた。 「そ、そんな、お礼なんて必要ありませんよ。私はただこのちゃんが無事で、元気でさえいてくれればそれで…」 「ほならな…さっき2回もしてくれたけど、あれはしょうがなしでやってんな。せやから今度はちゃんとしようや。」 「は?」 きょとんとする刹那。そのときこのかが刹那の両頬を両手で優しく挟み込んだ。 目を閉じたこのかの顔が近づいてくる。 そして…2人は口付けを…んん っ……………………………………………………………………………ぷはっ! 「こ、この…ちゃん…」 なが〜くて濃厚なあま〜いキスにまたまた刹那の体中は完熟トマト状態に。いやむしろ半ば放心状態だ。 「どや?これがウチのお礼やえ。せっちゃんはウチの…ウチだけのヒーロー、王子様なんや。」 ニッコリ笑うこのか。 「あ、あたし急用思い出しちゃった…じゃ、じゃあまたね、このか。」 「あ、ぼ、ぼくもー!それじゃあこのかさん、お大事に〜。」 気まずくなってしまったアスナとネギは足早にこのかの病室を出て行ってしまった。 「こ、この…ちゃん…」 「あ、せっちゃん…ウチったらまた…め、迷惑やったか?」 刹那はこのかから一旦目を逸らし、 「いえ…あの…その…あ、ありがとうございます。さ、最高のお礼です。その…大切な私だけのこのか姫…」 刹那はこのかのほうに向き直った。このかの顔がパーっと明るくなる。 「せっちゃーん♪スキスキダイスキ!愛してるえ!」 「え!?あ、う…は、はい!その…わ、私も…あ、あなたのこと………あ…愛してます!!」 ああ、とうとう言っちゃった………。それを聞いたこのかは刹那に思いっきり抱きついた。 今度は刹那は拒絶したりせず、このかをギュッとしっかり抱きしめ返した。 今日、2人の絆はさらに深まったのであった。 おしまい |
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