| きせかえせっちゃん〜このちゃんといっしょ〜 「私と街へ?」 ある晴れた日曜日の朝、刹那は友人のアスナとこのかに遊びに誘われていた。 「うん、もっと刹那さんと仲良くなりたいし、いいと思わない?」 「せや、いこうや〜せっちゃん。」 あの修学旅行以来、刹那はこの二人との付き合いが増えていった。それまではクラスメートだというのに、全くといってもいいほど交流がなかったのだが。それだけではなく、担任教師のネギや他の生徒たちとの関わりもだんだん増えてきた。 刹那は少し迷っていたが、アスナとこのかの誘いを受けることにした。 「…わかりました。行きましょう。用意しますので、少し待っていてください。」 そういうと、彼女は寮の自室へと戻って行った。しかし、ものの数分で出てきた。財布といつも持ち歩いている愛刀「夕凪」を取りに行っただけだったのだ。アスナとこのかはお互いの顔を見合わせた。刹那の服装はいつもの学園の制服だったのだ。 「刹那さんいつも制服だけど、私服とか持ってないの?せっかく街へ行くのにそれじゃあねぇ…」とアスナが苦笑いしながら言った。 「はぁ、制服以外の服といったら、体操着や剣道着ぐらいですが。」 するとこのかが、 「あかん、それじゃあかんえ。せっかくせっちゃんはかわええし、美人やし、体格もなかなかええのに、おしゃれのひとつもせんなんてもったいなすぎるえ。よし、アスナ!」 「OK!このか、刹那改造計画発動ね!私たちの部屋に刹那さんを連れて行くわよ!」 「へ……えっー!?な、何するんですか?ちょっ、ちょっとだめですってばー!」 こうしてアスナとこのかは、恥ずかしがる刹那を彼女らの部屋へと連行していった。そしてその数分後、刹那は二人の着せ替え人形と化すのであった。 刹那を半ば無理やり連れ、部屋に戻ったアスナとこのかは早速タンスや衣装棚を調べ始めた。刹那が逃げ出さないようにシャワールームに閉じ込めて(ヒドイ…)。刹那は観念したのか、このかの言いつけ通りシャワーを浴び始めた。そこにネギが帰って来た。 「あれ?アスナさんこのかさん、何やってるんですか?こんなにちらかして。」 「あ、ちょうどよかったネギ。実はかくかくしかじかで…。」 「そういうことでしたら喜んで協力させていただきますよ。」 それを聞いた刹那は肩をすぼめ溜息をついたのだった。 最初刹那は衣装を無理やり着せられるのに抵抗していた。しかしネギの捕縛魔法で動きを封じられ、結局されるがままとなってしまった。 「う〜〜〜、せっちゃん、ドレス姿が綺麗やわ〜♪もしウチが男の子やったら、即結婚やえ。あはっ。」 そう言うとこのかは刹那に抱きついた。すでに刹那の体中完熟トマト状態で、湯気が出ている。もうほとんど気絶している状態だ。胸はドキドキ、今にも心臓が飛び出しそうだ。 「はぁはぁはぁはぁぁぁ…ごのじゃ〜ん、いげまぜん〜…○&■×#▼¥△$●*……?」 このかの言うとおり今の刹那は、老若男女問わず誰もが息を呑むほどの超絶美人であった。アスナもネギもウットリしてしまう。 しばらく沈黙が続いた。そして、落ち着きを取り戻してからアスナとこのかが言った。 「刹那さんしっかりしてよ。まだまだこれからなんだから。他にもいいのがたくさんあるんだよ。」 「そうやで〜覚悟してや〜せっちゃん♪せっちゃんには選択権はあらへんえ。次はこれやえ!」 悪びれる様子もなく、アスナとこのかは次々と服を用意する。刹那はそれらの服を半ば無理やり着せられ、そのたびに記念写真を撮られた。もともと部屋にあった服だけでなく、ネギが魔法で出したすごい服もあった。中にはコスプレ通の長谷川千雨でさえも度肝を抜かれるような逸品まであった。 長瀬楓が来ているようなチャイナドレスをはじめ、忍者服、桃太郎、ピーターパン、バニーガール、野球選手、ミニスカート、看護婦、メイドさん、スチュワーデス、茶々丸のコスプレ、エヴァンジェリンが好みそうな服、某ゲームの格闘家、某少女アニメのコスプレ、セーラー服、チアリーダー、キャミソール、セパレートの水着、天使の衣装、猫の衣装、パジャマ、巫女服、高級そうな浴衣や着物などなどなど、もうたっくさん!(書きすぎた…By筆者) そのうちこのかも加わって衣装を着て、刹那とのツーショット写真をアスナが撮る、という形になった。ネギは傍らでワクワクしながらビデオ撮影をしていた。時刻はすでに昼をまわっていた。 「次はこれよ!このかと刹那さんのペアルック!……いいよ、すっごくいい!はい、並んで並んで。はいポーズ!」 「はぁぁぁぁ、せっちゃんどの服もすっごいかわええで。やっぱりもとがええからやな〜。」 すると、ネギが時計を指差しながら 「アスナさん、このかさん、もうお昼の1時まわってますよ。そろそろお開きにしないと出かける時間がなくなってしまいますよ。」 「そっか、う〜ん残念だけど今度でラストにしようか、このか。」 「しゃあないな〜なら最後はやっぱり……これやえ!」 このかが選んだのは、純白のウェディングドレスとタキシードだった。あまりの白さのため、窓からの日光に当たるとまるでダイヤモンドがちりばめられているかのように輝いて見える。 「うふふふふ、それならこのかがドレスで刹那さんがタキシードかな?」 とアスナ。 しかし、このかの意見は違った。 「あ、それやったらさっき和服着た時と同じパターンになってしまうえ。今回はせっちゃんにウェディングドレスを着てもらおうや。」 もはや刹那はこの状況に慣れてしまった。これが最後と聞き、さっさと終わらせようと自らドレスに着替え始める。それが終わると、次にアスナが簡単にだが刹那にメイクを施す。いつもまとめている髪もおろし、ストレートヘアにしてベールをかぶせる。このかもタキシードに着替え、準備は完了。 刹那は最初にドレスを着たときよりもさらに美しさを増していた。他の三人はあまりの美しさに絶句している。……間をおいて、ようやくアスナが沈黙を破った。 「刹那さん…もう言葉はいらないわ…このかと並んで…笑って笑って。うんいいわね、撮るよ。」 カシャ。写真を撮り終えた。が、このかが、 「まってアスナ、もう一枚だけどうしても撮りたい写真を思いついたんや。ちゃんと撮ってな。」 そういうとこのかは、刹那を正面から見据えて、 「せっちゃん、ウチのこと好きかえ?ウチはほんまにせっちゃんのことがダイスキなんやえ。」 と言ってきた。刹那は、本日で最も赤面しつつも答えた。 「こ、このちゃん…。そ、そらもう…私もこのちゃんがその…だ、ダイスキやえ…。このちゃんもさっきゆうてたけど、もしこのちゃんと私が女同士やなかったら、その…結婚したいと思うぐらいかもしれへん…」 「そうか、ほんまにおおきにせっちゃん。ウチの頼み聞いてな。軽く目を閉じるだけでええんや、頼むえ。」 刹那は一瞬怪訝な顔になったが、この着せ替え遊びを早く終わらせるためにもと、目を閉じた。 その直後、刹那の唇が何かやわらかいものに触れた。刹那は思わず目を見開く。最初何が起きているのか理解できなかった。……なんと信じられないことに、このかの顔がすぐ目の前にあった。と、同時に刹那は唇に触れていたのは、このかの唇であることに気づく。 (こ…の…ちゃ…ん!?!?!?) 刹那の頭の中は真っ白になった。アスナとネギの方も呆然としていた。 静かに時が流れた。長い沈黙を破ったのはこのかだった。さすがのこのかも顔が真っ赤になっている。 「どや…アスナ…うまいこと写真撮れたかえ…?」 「あ、忘れてた……。そ、そーじゃなくって!なにやってんのよこのか…こんな、こんなこと…あああああ…。刹那さんの了解も得ないでそんなことしちゃだめじゃない。確かに私だって刹那さんをおもちゃみたいに扱っちゃったけど…でも、だめだよやっぱりこんなこと…。」 アスナは肩をわなわなと震わせながら怒鳴った。すると、このかが我に返ったように慌てて話し始めた。 「はっ…し、しもた…ああああ…スマンスマンせっちゃん!ウチとんでもないことを…かんにんして……うう、もうせっちゃんに顔合わせられへんえ。もうあかん、せっちゃんに嫌われてしもたー。」 このかはすでに半泣き状態であった。自分の一瞬の出来心で刹那の唇を奪ってしまった、彼女を傷つけてしまったと。とてつもない後悔の念がこのかを襲う。 アスナも刹那の着せ替えに関して調子に乗りすぎたことと、今このかにきつく怒鳴ってしまったことを後悔していた。ネギはどうしていいのか分からず、ただオロオロしている。 この状態を打破したのは、他でもない刹那だった。優しく穏やかな顔をして彼女は言う。 「このちゃん、大丈夫やえ。ちょっとびっくりしてしもうただけや。ちっとも気にしてへんえ。それどころか、ウチうれしかったんやえ。このちゃんがウチを思う気持ちが、ほんまによう伝わって来たえ。ほら泣かんといてーな。涙をふいてや。ネギ先生もアスナさんも気にしないでください。私も新しい自分を発見できたようでけっこう楽しめましたから。」 そういって刹那はこのかにハンカチを差し出した。 「せ、せっちゃん…ええん?ほんまにええん?ほんまに許してくれるん?」 「うん。このちゃん、ダイスキやえ。小さい頃から今までも、そしてこれからもずっと。」 「せっちゃーん!」 このかは刹那に抱きついた。刹那はさっきまでとは打って変わって、優しい笑みを浮かべてこのかを受け止める。そして、そのまま抱き上げる。いわゆるお姫様だっこの形となった。このかは刹那を抱き寄せてゆっくりと…再び口づけを交した。その光景はこの世のものとは思えない程の美しさだった。もっとも、花嫁が花婿を抱き上げるという滑稽な光景ではあったが。 アスナは思わずシャッターを切った。そのフィルムには今この世で最も幸福を感じている、友情を超えた愛情で結ばれた二人の少女の姿が写し出されていた。 「せっちゃん、昨日はかんにんな。せっかくの休日やったのにあんなことにつき合わせてしもうて。」 「私もごめんね。ついつい悪乗りしてしまってあんなことに…。」 「いいえ、もう気にしてませんよ。あ、少しだけ気にしてるかもしれませんね。かなり恥ずかしかったですから。でも、けっこう私も楽しめましたよ、新しい自分を発見したみたいでおもしろかったです。」 昼休み、四人は昼食を囲んで昨日を振り返っていた。 「あはははは、でもほんまによう撮れてるえ、この写真。」 「うん、そうだね。特に最後に撮ったやつ。でも、こんなの他のみんなには絶対に見せらんないね。」 「ええ、それだけはくれぐれもお願いします。こんなものを人に見られた暁、私は生きていけませんから。」 刹那の言葉にネギは、 「そんなこと言わないでくださいよ。でも、確かにこれは外に漏れたらまずいですね。寮に帰ったら、ビデオも含めてぼくが封印しておきますよ。」 「お願いします、ネギ先生。」 そこに、3−Aのメンバーたちがやって来た。 「あーネギ君こんなところにいた!私たちも一緒にネギ君とご飯食べるー!」 と佐々木まき絵が言った。すると委員長である雪広あやかが、 「まあ、ネギ先生ここにいらしたんですね。暴力女のアスナさんなんか放っておいて、私とお昼をご一緒しません?」 「なんですってー!」 アスナとあやかの喧嘩はいつものことだ。怒ったアスナが勢いよく立ち上がろうとしたそのとき、アスナの髪がネギの鼻にかかる。 「ハ、ハーークシュン!!」 突風が吹きつける。いつもならここで女生徒のスカートがめくれ上がったり、衣服が破けたりするのだが、今回は違った。 「あーーー!写真がーーー!!!」 「わー!みなさん、触らないで拾わないで見ないでくださいー!」 このかと刹那はあわてて写真を回収しようとしたが、ときすでに遅し。写真の大半がクラスメートの手に渡っていた。 「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!? !?!?!?!?」 その直後、その場に嵐が吹き荒れたのは言うまでもない。図書館探検部やチアリーディングトリオはバカ騒ぎするわ、スクープ大好き朝倉和美は目の色を変えてインタビューをしようとするわ、あやかは感動のあまり涙を流すわ、刹那は切腹しようとするわ、アスナは必死に弁解の言葉(最ももはや意味不明だが)をまくしたてるわ、ネギはパニックを起こして倒れるわ、他のメンバーらも一斉にこのかに詰め寄るわで、もう大混乱。 それからというもの、このかと刹那は3−A公認のカップルとなってしまった。話題もこの二人のことでもちきり。さすがにこのままでは刹那の立場がなくなるので、ネギが同僚の高畑にみんなの記憶を操作させることで状況は緩和された。あくまで緩和だが…。 写真やビデオはというと、そのほとんどがネギに封印されたが、最後に撮ったウェディングドレスのものだけは、写真立てに入れられ、このかの勉強机の上に置かれている。“世界一幸福な二人”の姿がいつもそこにある。 Fin. |
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